読解力低下に学校現場も危機感「日本語特区」の取組みスタート

思考の根幹は読解力を重点的に!
「世田谷『日本語』教育特区」を申請する

 昨年末大きな反響を呼んだ経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査。わが国の学力低下が顕著にあらわれた結果となり、今後の教育指針を揺るがすこととなった。その結果のなかで、とくに「読解力」の到達度の低さが目立ち、全ての思考の根幹に位置する重要な能力の低下に現在の教育の問題点が浮き彫りとなった。
世田谷「日本語」教育特区の取組み
 このような状況の中、東京都世田谷区では、構造改革特別区域計画へ「世田谷『日本語』教育特区」を申請し、このほど認可が下りた。

●知識主導へ
 これからの国際社会では単に英会話ができることが重要なのではなく、深い素養をもった人が必要であること、また日本人としての豊かな情操を身に付け、深く柔軟に考えられる人が、知識主導の国際社会で活躍する人材となると、世田谷区では考え、今回の申請となった。

●世田谷教育ビジョン
 そこで、世田谷区教育委員会では「世田谷区教育ビジョン」を策定し、知識主導の国際社会で活躍できる児童・生徒を育成することを目標として、児童・生徒には「人の道を知り」「誇りうる日本の情操を身に付け」「深く柔軟に考え」「自分を表現することができ」「さまざまな文化、言語などの国際社会の中で他の国々の人々とともに生きることができる」ような教育を目指す。
 そのためには義務教育課程において思考の土台となる言語を学習する科目を設け、深く考える素養を身に付け、表現する学習を充実するために世田谷区の全小・中学校に教科「日本語」を新設することとなった。

●小学校の指導内容
 小学生に対しての指導内容例は、具体的には次のようになる。

1.言葉に関する興味・関心を伸ばすことを中心と正しく音読する力、黙読する力など「読む力」の基礎を培う。たとえば簡単な近代詩や古典を素読し、言葉のもつリズムを体感する。

2.身近な自然や地域の様子、生活の事象、生命現象などに疑問をもつことができ、主体的に考えようとする。

3.学校での出来事を伝える活動や、スピーチなどを通して、相手に分かるように自分の考えを話す基礎を養う。

4.カルタや唱歌など身体を使った活動を通して日本に伝わる情操や文化の息吹を感じる。

5.日本文化を伝承している演技・実技を鑑賞し、その存在を知る。

 加えて、5,6年生になると、「一つのテーマを自分で設定し、それについて調べたり、考えたりして、レポートとしてまとめることを通して文章で筋道を立てて表現する」といったさらに深い学習を予定している。

●中学校での指導内容
 さらに、中学校では教科「日本語」を「哲学」「表現」「日本文化」の三領域に分けて指導を行う。
 「哲学」領域では、社会問題、自然現象と自己との関わりに着目して課題を設定することができ、それを追究する学習を通して主体的に深く考えることの大切さを知る。また、「生きる意義」「生き方」「生と死」などを考える学習を通して、命の大切さや自己を向上させる喜びなどを実感する。さらに、倫理、哲学や宗教、芸術などの意義について考察し人間の存在や価値に関わる基本的な課題を探求することで人としてのあり方について考える。
 「表現」の領域では、哲学とリンクさせ自分が考えたことをいかにして表現するかといったことやコミュニケーションの重要性、論理的思考の表現の仕方を学ぶことを目標としている。
 さらに、「日本文化」領域では、日本文化と外国文化を比較しながら自国の文化に対する認識を深めたり、日本文化について身近なテーマを設定しその由来や意味、伝承、継承する意義などについて考えることを学ぶ。
 中学校では、小学校で培った思考力をもとにさらに主体的な探究心を養うような内容となっている。
 これらの新しい試みは、本年2学期よりモデル校で開始し、平成19年には区立全校で実施する予定。日本語教育特区は全国でも初めての取組みですでにいくつかの大学、民間団体、NPOなどから協力の申し入れがあるようだ。単に記憶するだけで足りていたこれまでの学習から、個としての思考を重視する方向への転換となりうるだけに今後の動向が注目される。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://news.study.jp/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/76

コメントする

このブログ記事について

このページは、Study.jp 学びタイムズ < eラーニング Labo >が2005年6月28日 18:43に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「早稲田大学と連携 理科の実験授業」です。

次のブログ記事は「英語教師向け新テスト「TKT- 英語教育能力テスト」開始」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。